名古屋在住のエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、食品まつり a.k.a foodman。これまでにPitchfork、FACT Magazine, Tiny Mix Tapesなどの海外メディアで年間ベストに選出され、Unsound、Boiler Room、Low End Theoryといったシーンの重要パーティーへの出演も果たしワールドワイドな活動を広げる彼が、レフトフィールド・ミュージックにおける最重要レーベル Hyperdub と契約を果たし最新作"Yasuragi Land"をリリース。
アーティストとしては2010年代初頭に台頭したジュークやフットワークに大きな衝撃を受け、その後の自身の音楽形成に影響を与えたという。彼が伝えているのは、ジュークやフットワークの精神と感覚であり、彼の型破りなスタイルはそれに由来するとも言える。また、他のアーティストのプロデュースも行っており、アルバムにゲスト参加している Bo Ningen の Taigen Kawabe とタッグを組んで Kiseki というデュオでの活動も行なっている。
10代の頃から人前でのパフォーマンスを続ける彼は、人と集まってジャム・セッションしていたことがこのアルバムのインスピレーションになったという。それは一人で行う制作からは得られないものであり、そこから着想を得たサウンドとフィーリングをつなげて完成したのが本作"Yasuragi Land"の核心である。
今回のアルバムは Hyperdub としては珍しくベースが使用されておらず、それによって"Yasuragi Land"は爽やかで洗練された印象を与える。このハイパー・リズミック・ミュージックとも形容できる作品は、2、3のシンプルなツールを用いて制作され、リスナーに脳内でのダンス体験をもたらす。"Yasuragi"や"Parking Area"は、まるで丁寧に分解されたアコースティック・ジャズのようで、"Ari Ari"はマンガに登場するしゃっくりが飛び散ったようなディープハウスだ。"Hoshikuzu Tenboudai"と"Shiboritate"はライヒのようなミニマル・ミュージックのトランス的な要素がアップデートされポリリズム化した楽曲とも表現できる。"Food Court"には機械的なリズムと素朴なメロディが入り組み、"Galley Cafe"ではキュートな木笛のメロディとマイクロエディットされた木製ドラムが対になっている。ヴォーカル・トラック2曲のうち、Taigen の"Michi No Eki"では、Magma の楽曲のような複雑なロックをカジュアルでデジタルに描き、"Sanbashi ft. Cotto Center"は80年代のR&Bを彷彿とさせる。アルバムを締めくくる"Minsyuku"には、ダフトパンクのトラックから拝借したようなギターが聞こえ、隙間なくもつれ合ったドラムに織り込まれている。
日本盤CDには解説が封入され、ボーナス・トラックが追加収録される。